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ジャンルーカ・カプアーノ氏再来日公演
皆様、こんにちは。大変ご無沙汰しておりました。すっかり更新を怠ってしまいましたが、久々に更新します。と言うのも、昨年カリッシミ生誕400周年記念コンサート「オラトリオ編」で指揮をして下さったジャンルーカ・カプアーノ氏が、この夏再来日される事になり、昨年のコンサートの際にお客様からも出演者からも「ぜひまた!」という声が多かったので、急遽コンサートを行う事にしました。

今回は、「水の都の聖母マリア」と題して、初期バロック時代のヴェネツィアの二大作曲家であるクラウディオ・モンテヴェルディとフランチェスコ・カヴァッリの「聖母マリア」に関する曲を演奏いたします。
モンテヴェルディに関しては、今更多くを語る必要のない作曲家ですが、カヴァッリはまだ日本でもあまり知られていない作曲家でしょう。彼は、ヴェネツィアの聖マルコ大聖堂の楽長としてモンテヴェルディの後を継ぎ、宗教曲作品においては聖マルコ大聖堂の伝統的音楽形態である器楽伴奏付き「コンチェルタート様式」に従っています。また、オペラの作曲家としても、ヴェネツィアの劇場のために30曲近くの作品を書き、ヴェネツィアでのオペラの地位確立とイタリア各地への普及に重要な役割を果たしました。オペラも宗教曲も決してモンテヴェルディに引けを取らない素晴らしい作品です。

今回の公演は、九段にあるイタリア文化会館のアニエッリ・ホールで演奏いたします。ここは、皆さんもご承知の通り、昨年秋に改築されて以来、景観論争を呼んでいる建物ですが、この館内にあるホールはコンサートだけでなくイタリア文化に関する講演会やシンポジウムなどのために作られました。しかし、コンサートホールなみの素晴らしい音響と雰囲気を兼ね備えています(革製の客席もなかなかの座り心地です)。

ところで、このイタリア文化会館の景観論争、外壁にある「赤色」が問題で、近所の住民による塗り替え要求の署名まで集められたとか。よっぽど奇抜な色なのか、と思いきや、日本の寺院などに見られる明るい「朱色」ではなくむしろ「あずき色」。何度か足を運びましたが、そんなに周りの建物と違和感があるとは思えませんでした。むしろ、近くの九段下交差点にある「昭和館」の奇妙な建物の方が、横のクラシカルな九段会館や武道館らの雰囲気を壊しているのでは???思っていたところ、数日前の新聞によると、問題となっている外壁は、私が普段出入りして見ていた正面玄関側でなく反対側の千鳥が淵との景観の問題との事。写真を見ると、外壁のなかでかなりその「赤」の割合が多く、確かに目立っています。これが、千鳥が淵の緑と合わないのだそうな。
しかし、このあずき色的な「赤」、私が住むボローニャでは至る所で見られます。役所や学校、図書館、美術館などの公共の建物の窓枠やカーテン、市内バス、公衆電話のボックス、ごみ入れ、などなど。グレーやベージュの建物にマッチして、大変落ち着いたボローニャの独特の雰囲気を作っています。なので、このイタリア文化会館の色も、きっとイタリア人にとっては大して奇抜な色ではないのでしょう。

余談ですが、イタリアに住み始めて感心した事のひとつに、イタリア人の色彩センス。お店のショーウィンドウのディスプレイや服の色の組み合わせ、またバスや電車のシートの色など、「こんな色の使い方、組み合わせがあるのか!」と感心する毎日です。夏のこの時期、男性のファッションで良く見られるのは、それこそあずき色のズボン。イタリア人の男性は全員この色のズボンを持っているのではないかと思われほど、若者から年配までほとんどの年代の男性が着ています。しかも、この時期はその上に白無地や白と青のストライプなどのシャツを胸を大きく開け、シャツの裾をズボンの上に出してルーズに着、素足で白いスニーカーやローファーを履く、というのが定番のようです。これが日焼けした肌に良く似合い、とってもセクシー。一度主人にも「こういう色、履いたらぁ〜。」と言ってみたところ、「こんな派手な色、恥ずかしくて着れるかっ。」と一言。やはり、この色は日本人にとっては派手な色なのでしょうか。。。
でも、私は「髪や目の黒い東洋人ほど派手な色が似合う」と思っています。大学院の頃、春休みを利用して、語学研修のためにフィレンツェで1ヶ月間初めて「イタリア生活」をした時の事。3月8日のミモザの花を女性に贈る「女性の日」が終わると、冬のセールもピークを過ぎ、お店のショーウィンドウは一斉に春色の服が並び、色彩豊かになるのです。そこで、私もイタリア人が良く着ている薄いグリーンや水色、薄紫などのの服を買ってみようかといくつか試着したのですが、なんだか雰囲気が違います。そこで、ちょっと目に入ったオレンジのブラウスを「派手かも?」と迷いながらも手にすると、一緒にいたイタリア人の友達が「日本人は目も髪も黒いから、こういうはっきりした色は似合うわよ」と一言。この言葉に後押しされて、購入しました。確かに金髪や栗色の髪には薄いパステルカラーの服が似合いますが、黒髪にははっきりした色が似合うかも。そして、この派手なブラウスを着て帰国した私が目にしたものは。。。街を行き交う暗い色の人、人、人。新学期開始の4月頭という事もあって、駅の階段の上から下を見ると、黒い髪、紺やグレーのリクルートスーツでとても暗い印象を受けました。それ以来、「黒髪の東洋人こそ明るいはっきりした色を着るべき」と実感し、赤や真っ青、オレンジ、緑などの服を選ぶようになりました。たとえ周りから「派手ねぇ」と言われようとも。

日本は街に看板やネオン、外壁など、建物にいろんな色が使われていますが、イタリアの建物はグレーやベージュ、茶色、白など薄い色のみ、看板もネオンもありません。なので、逆に街行く人々の服の色や車の色がとても際立って美しく見えるのです。このような環境でイタリア人の色彩感覚は培われたのではないでしょうか。

古い建物が多く残るイタリアこそ景観規制が厳しいのですが、京都や奈良など、古都の美しい古い町並みが壊されている日本で、このイタリア文化会館のような景観問題は、「今さら。。。」という気もします。ともかく早く解決されるといいですね。

という訳で、すっかり余談が長くなってしまいましたが、今回はぜひ、モンテヴェルディとカヴァッリの音楽とともに、このホールもお楽しみに!

余談ついでですが、このアニェッリ・ホールで行われるお薦めのコンサートをひとつご紹介。6月18日にナポリのグループ「カペッラ・デッラ・ピエタ・デ・トゥルキーニ」のコンサートが行われます。アントニオ・フローリオ率いるこのグループは、主に16〜18世紀のナポリ音楽を演奏しています。日本にぜひとも紹介したい演奏団体のひとつで、主人も何度か共演していますが、その演奏の完成度と独創性は世界でもトップレベルです。看板テノールのジュゼッペ・デ・ヴィットーリオの名唱(名演?)も聴きものですし、イタリアの様々なグループで演奏されている日本人ヴィオリニストの益田弥生さんも出演されます。お時間のある方はぜひ一度「生演奏」を聴いてみて下さい。


水の都の聖母マリア

日時:2006年8月1日(火)18:30 開場、19:00開演
場所:イタリア文化会館アニェッリ・ホール
曲目:クラウディオ・モンテヴェルディ (1567-1643)/サルヴェ・レジーナ、サンクタ・マリア、グローリア
フランチェスコ・カヴァッリ (1602-1676)/3声のためのソナタ、サルヴェ・レジーナ、アヴェ・マリア・ステッレ、マニフィカート
など
出演者:ジャンルーカ・カプアーノ(指揮&オルガン)
櫻田智子(ソプラノ)、穴澤ゆう子(メゾ・ソプラノ)、彌勒忠史(アルト)、櫻田亮・谷口洋介(テノール)、萩原潤・小田川哲也(バス)
荒木優子・佐藤泉(バロック・ヴァイオリン)、櫻田亨(テオルボ)、西澤央子(バロック・チェロ)、西澤誠二(ヴィオローネ)

チケット:前売り4.500円、当日5,000円

マネージメント:アルケミスタ 03-3901-1573(平日10-18)

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by carissimi | 2006-06-10 00:43 | 水の都の聖母マリア
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