このコーナーでは、お薦めのイタリアの演奏家やCD, コンサートなど、イタリアの古楽事情をご紹介したいと思います。
ではまず、演奏家から。日本の皆さんにご紹介したい演奏家は沢山いますが、まずは声楽家。
Roberta Invernizzi (ロベルタ・インヴェルニッツィ)ソプラノ
一番にご紹介したいのがなんと言ってもこの人、ソプラノのロベルタ・インヴェルニッツィ。現在イタリアの古楽歌手で最も活躍しているソプラノ歌手で、実は私の先生。5,6年前にメゾ・ソプラノからソプラノへの転向を決心した私は、さて、どんな歌手をお手本にしていこうかと、様々なソプラノ歌手のCDを聴きまくりました。が、従来の古楽のソプラノ歌手は、なんだか体を使いきらず咽を閉めた発声で、大人の女性が歌っているという感じがしない淡泊な声と表現という印象があって、なかなか「この人!」と思う人がいませんでした。
最初にこの人の声を聴いたのは、6年前クレモナのモンテヴェルディ・フェスティヴァルで「ダイドーとエネアス」の中のベリンダ役。この時、ダイドーを歌ったオペラ畑のメゾよりも声が通り低音もしっかりして、表現も豊か。それまでの古楽のソプラノのイメージを大きくうち破るもので、「古楽のソプラノにもこんな人がいるんだぁ!」と大変印象に残っていました。数ヶ月後パリまで彼女のコンサートを聴きに行き終演後、レッスンを受けたいと直談判しました。それ以来ほぼ毎月ボローニャからナポリに通い、彼女のコンサートにもほとんど追っかけのように行きまくっていました。
彼女の歌は、ピアニッシモやアジリタのテクニックは勿論、言葉ひとつひとつ、フレーズひとつひとつに注意が払われ、音程も正確、全くすきのない歌なのです。しかも彼女の性格同様、明るく大胆かつ繊細。レッスンで彼女から様々なアドヴァイスを受けられるのも嬉しいのですが、目の前で彼女の生の声を聴けるというのが、最高の幸せ。しかも疲れていたり、落ち込んでいる時に、彼女に会って話をしたり彼女の声を聴くと、とても元気になるのです。私より2歳だけ年上の彼女は、時には師、時には姉のようなとても頼りになる存在です。
ミラノ生まれなのに「ミラノは暗くて嫌い」と言って、ナポリに住んでいた彼女の家は、すべての部屋の窓から、ナポリの海、イスキア島などが見える高台のアパート。そこにおじゃました時、「ああ、彼女のこの明るい性格と歌は、この環境が大きく影響しているのだなぁ」とつくづく思いました。
彼女が歌っているCD録音は沢山ありますが、ここでは彼女のソロCDをご紹介します。
Georg Friedrich Haendel 「Lucrezia」cantata e sonata da camera
演奏:Retablo Barocco
録音:1996年 Stradivarius (STR33424)
「Non e' tempo d'aspettare」Frottole dal Libro I di Francisus Bossinensis
演奏:Accademia Strumentale Italiana
録音:1998年 Stradivarius (STR33516)
Caludio Monteverdi A voce sola, con sinfonie
演奏:Accademia Srtumentale Italiana
録音:1999年 Stradivarius (STR33562)
John Dowland 「Come away, come sweet love」演奏:Accademia Strumentale Italiana
録音:2001年 Stradivarius (STR33614)
「Donna Barocche」Women composers from the baroque period
演奏:Bizzarrie Armoniche
録音:2001年OPUS111(OP30341)
Furio Zanasi(フリオ・ザナージ)バリトン
次にご紹介するのは、バリトンのフリオ・ザナージ。この人はすでに何度か来日しているので、ご存じの方も多いかと思いますが、モンテヴェルディのウリッセやオルフェオ、「タンクレディとクロリンダ」のテキストを歌わせると、「この人の右に出る人はいない!」と誰もが思う人。モンテヴェルディをはじめ初期バロックのテノールは、テノールに与えられたパートでもたまに音域がテノールには低い時があるのですが、この人の声にはぴったり。上記の役は勿論、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」の中の「Audi, caelum」などは聴いてるこちらが溶けてしまいそうになるほど素晴らしいのです。本当に素晴らしい声と表現力。イタリアに住み始めてまだ、イタリアにどういう古楽歌手がいるか全く知らなかった頃、主人のイタリアでの最初の仕事で彼と一緒になり、主人はまだ彼がどんな人か知らず「良い声ですね」なんて声を懸けてしまったらしいのですが、今から考えたら恐ろしい。どこの馬とも知らない東洋人の若造がこんなに素晴らしい歌手に不覚にもこんな事を言ってしまって。。。
この人も沢山録音がありますが、ここではモンテヴェルディの録音をご紹介します。
*CD
Monteverudi「Combattimento di Tancredi e Clorinda」指揮:Gabriel Garrido
演奏:Ensemble Elyma
録音:1997年K617(K617095/2)
Monteverudi「Il ritorno d'Ulisse in partia」指揮:Gabriel Garrido
演奏:Ensemble Elyma
録音:1998年K617(K617091/3)
Monteverdi「Vespro della beata vergine」指揮:Gabriel Garrido
演奏:Ensemble Elyma
録音:1999年K617(K617100/2)
*DVD
Monteverdi「Orfeo」指揮:Jordi Savall
演奏:La Capella Reial de C atalunya, Le Concert des Nations
録音:2002年 OPUS ARTE(OA0843D)